広がる親父の妄想の翼

 こんにちは。9月に入っても相変わらずスッキリしない天気が続きますね。

 退院して自宅療養に入った親父。犬が見える、カラスが見える等の幻視が続いていましたが、1週間程経った頃、変化が表れました。

 いつものように夜勤に出かけたオレ。嫁から「お父さんが懐中電灯を持って、家の外に飛び出した」とのLINEが入りました。

 外に出た親父は家の前に駐車したご近所さんの車の周りをグルグルとまわり、「こんな場所に停めやがって!」と窓ガラスを懐中電灯で叩こうとしたらしいのです。

 慌てて止めた嫁。親父の目は三角のお怒りモード。嫁は殺気すら感じたと言います。

 ご近所さんが駐車しているのは、れっきとした駐車場で、その方が借りている場所。親父が文句を言う筋合いのものではございません。それどころか、昨日今日停め始めたのではなく、長年停めている日常の光景なのです。

 なんとかなだめて、家に戻しても、侵入者がいると言って聞かない親父。懐中電灯片手に家中をパトロールです。怒りに震える般若のような顔で。

 更に、怒りの矛先は嫁へと向かい始めました。

 「お前がよそのものを連れてきたんだろうが!!!!」と怒鳴る親父。当然、その時家にいるのは、親父と嫁、そしてオレの息子の家族3人だけです。

 なんとか収まり、翌朝オレが帰って嫁から話を来てる途中に親父が乱入。「こら!!!まだ色々と言ってるのか!!!」と意味不明に嫁を怒鳴りつけます。

 どうやら、親父は自分が寝ている間、他人が家の前に車を停めて、勝手に家の中に入り込んだと思っているらしいのです。で、その手引きをしたのが嫁だと。

 正確に言うと、親父はその侵入者の姿を見ているのです。幻視という形で。

 だから、言ってる事に一貫性がありブレがありません

 この一件以来、すっかり嫁が親父を怖がるようになってしまいました。

 翌日の夜も同じような行動をとる親父。さすがに嫁は怖くて近づけず、長男に親父の説得を任せました。

 で、夜勤中のオレの携帯を鳴らす長男。

 「父ちゃん!じぃちゃんが車の鍵をよこせと叫んでいる。俺じゃもう手に負えない」という長男。

 彼は彼なりに一生懸命、爺さんをなだめてくれていたのです。怖がる母親を気遣いながら、意味不明な事を叫んで暴れる爺さんを優しく抑えようとする長男。

 その様子が電話の向こうから伝わり、思わず涙が出そうになるオレ。

 「わかった。今から帰るからあと30分、なんとか持ちこたえてくれ」と長男に伝えて、自宅へ車を走らせました。

 その車中で「このままでは家庭が崩壊してしまう」と考えるオレ。そしてある決意をしたのです。

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