親父とオレのプチ冒険

 こんにちは、オレです。

 親父が認知症を発症するきっかけとなった階段からの転落。

 その時に胸骨を圧迫骨折し、3週間の入院後の自宅療養。最初はベッドから起き上がるのに「アイタタ、アイタタ」言い、顔をしかめたまま手すりに掴まり室内を移動していました。

 2ヶ月経った今では、コルセットさえ装着していればスイスイと動けるようになり、歩行等には問題がない普通の健康なおじいちゃんになっています。

 な訳で、家の中でオレがサポートする事はほぼなく、日中は放置状態でも大丈夫みたいです。(夜になると妄想で外に出ていこうとするのはたまにありますが 笑)

 先日、親父が定年まで勤め上げた勤務先で、年金関係の説明会があり出かける事に。

 元々、外に出かけるのが大好きな親父。認知症になってから、それも制限されていたので大喜びで何日も前から楽しみにしていました。

 当日、大きな手提げ袋が二つ玄関に置かれています。どうやら親父が持っていくものとして準備した模様。

 中を覗いてみると、事前に送られてきた書類の入った封筒、筆記用具、年金手帳関係。まぁ必要なのはこれくらいなのですが、何故かボックスティッシュが2個、リモコン各種(テレビ、ビデオ、エアコン)、電気シェーバーが2個、パジャマ、室内スリッパ等々

 現在身の回りにあるものをみんな詰め込んでいるのです。

 親父に「今日はただの説明会だから、こんなに物はいらないよ」と言うと、「そうか。でも何があるかわからんから」という返事。

 ちょっと不機嫌そうな顔をしだしたので、まあいいかと思い、車のトランクに積んで出発。

 車中の親父は終始ご機嫌。まるで遠足に出かける子供のよう。そういえば前日の夜はいつまでも寝付けてなかったみたいです(笑)

 会場近くの駐車場に車を停めて、親父を降ろします。

 大きな手提げ袋を二つ抱える親父。家の中はスイスイと軽やかに移動していますが、他の歩行者も多い街中に出ると、さすがにペースが違いスローモーで危なっかしく見えます。

 すれ違う人、一人一人に「今日の説明会はどこですか?」と尋ねる親父。怪訝な顔をする人に「すみません・・」と小声で謝るオレ。

 やはりひとりの外出は無理のようです。

 会場に付き、説明会が始まりました。15分位が経過したところで、荷物をゴソゴソして落ち着かない親父。明らかに退屈している様子です。集中力が持続できずに説明が頭に入っていかないんでしょうね。

 なんとかやり過ごして、休憩の時に「もう説明は理解しただろ?帰ろうか」と声を掛けると「そうだな。ちょっと聞いただけで俺は理解したからな。」と上から目線(笑)

 また大きな手提げを2つ抱えて退出です。

 親父がトイレに行っている隙に関係者の人へ事情を説明してお詫び。

 「雰囲気でなんとなく分かっていました。大変ですね・・・。」と理解してくれたのが唯一の救いでした。

 帰りの車中で爆睡する親父。昨晩眠れなかったのと、外の人と接した緊張から疲れたのでしょう。

 家に着くと、ハガキが一枚届いていました。親父宛ての保険の説明会の案内です。

 親父に見られないようにソっと隠したのは言うまでもありません(笑)

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