今を生きてるはずの親父が…

 こんにちは。オレです。

 前に専門家の人から「認知症患者は今を生きている」という事を教えてもらいました。具体的に言うと、年齢的な物忘れと認知症の違いでは年齢的物忘れは、今日の昼食で何を食べたかは忘れても食事をした事は忘れない認知症患者は食事をした事自体を忘れてしまうといった感じのものでした。

 認知症の人には、今この瞬間・瞬間の事しかなく、ちょっと前の事・先の事という概念が無いという事で『今を生きている』という意味なのでしょう。

 実際に、うちの親父も『今だけを生きてる』と思われる事が多いです。毎日、夕食はデイサービスで済ませてきます。しかし、帰宅して、入浴を済ませてあとは寝るだけという時に、食卓にチョコンと座り、食事が出るのを待ちます。

 「お父さん、もう晩御飯は食べてますよ」と声掛けをすると、必ず「俺は知らん。食べてない」という返事。まるでひと昔前のボケ老人を扱ったコント「〇〇さん、飯はまだかね?」…「おじいちゃん、もう食べたでしょ」の1シーンそのものです。

 ほんの2時間程前に済ませたはずの夕食が、親父の中では完全に消去されています。もう一度食べさせてもいいのですが、最近ちょっと体重増加気味の親父。お腹の出過ぎで腰が痛いというトホホな状況なので、我慢させています。その際、親父は不機嫌に。『意地悪で食事を与えられない可哀想な老人』と思い込んでいるようです。

 そんなやりとりも翌日になればすっかり忘れています。夕べ不機嫌になったのもどこへやら。朝から普通に起きて、朝食をモリモリ食べてデイサービスで出発するのです。まさに『今を生きいてる認知症』の典型みたいな親父です。

 でも、先日ちょっとした変化がありました。朝から少しキツそうで、寝起きが良くない親父。なんとか着替えさせて、半ば抱えるように洗面所に連れていくと、服を脱ぎ出して風呂に入ろうとします。

 「おいおい、朝から風呂は無いよ」と声をかけると仏頂面で「もういい!どうせ俺は飯も食わせてもらえない」と吐き捨てたのです。

 ん?んんん?昨日の夜、食事を与えられなかった事を憶えてるんだ…『今を生きている』はずの親父だったのに、ちゃんと12時間くらい前の記憶が残っていたのです。しかも自分に都合の悪い腹立たしい記憶だけですが(笑)

 やはり人の頭の中は、杓子定規では測れない複雑なものですね。

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